長沼徹(令和2年卒/東京科学大学助教)
本学の卒業生で、建築設計教育や学内建築の設計など、多大な貢献をされた、那須聖教授が、2025年1月に逝去されました。突然の訃報に教職員や学生をはじめ、多くの方々が深い悲しみに包まれたこととお察します。当時、那須研究室には学士課程2名、修士課程19名、博士課程9名と、多くの学生が在籍しておりました。学生たちにとって、研究や活動の道標たる那須先生の不在がどれ程の不安であったか、計り知れません。そのような状況下で、卒業生を含めた那須研究室同窓会では、このまま那須先生との思い出を風化させるのではなく、先生のお人柄と業績、そして先生への感謝を広く伝えることを考え、「那須聖展 知の庭」を、大岡山キャンパス西5号館 製図室にて開催することを企画しました。
「知の庭」とは、那須先生が研究室のあり方について語った言葉です。
「大学の研究室は知の庭であり、学生はそのガーデナーです。庭には毎年、新しい種子がまかれ、知の生態系が更新されます。学生は思い入れのある種を育て、周りにも目配せします。同一種のみの庭は四季の変化も一定であり、管理はしやすいでしょう。一度そうしてしまうと、異なる種を受け入れるのは難しくなります。ですから、学生は好きな種を育てると良い。その分、庭の生態系を保つ責任があります。時間と共に庭の様相は変化しますが、そこに決められたゴールはありません。皆さんの貢献が積み重なり、それが風土となるでしょう。これは私の考える研究室の振る舞いですが、建築もそのように寛容で鷹揚でありたいと思っています。」
那須研究室10周年記念同窓会でのスピーチより抜粋

那須聖展 知の庭 ポスタービジュアル
(作成:森野涼帆 修士課程) |
この「知の庭」を体現するように、卒業生と在学生が一丸となって、会場構成やグラフィックなど、細部に至るまで妥協なく準備が進められ、2025年9月22日~ 28日に開催するに至りました。
展覧会のオープニングでは、那須先生のお別れ会を催し、先生に縁のある様々な所属の方が200名以上集まり、那須先生を想い、偲ぶ機会を作ることができました。
冬夏会や、学内の教職員の皆様、八木研究室の皆様、札幌市立大学の皆様等から多大なお力添えを賜りました。この場を借りて御礼申し上げます。
展覧会は、研究室移転と、研究と業績展示の大きく二つの構成に分かれています。研究室移転は、すずかけ台にあった研究室の家具や什器を移転し、会場と那須研究室がオーバーラップした教育の場の記憶を伝える展示で、研究と業績展示は、先生の年表とともに多彩なプロジェクトが点在し、その中を自由に巡る展示です。馴れ親しんだ那須先生に再会したり、知らなかった一面に出会ったり、訪れた方それぞれの思い出に寄り添えたなら幸いです。1週間という短い会期でしたが、500名以上の方に訪れていただき、那須先生を介して様々な世代が集い、交流する場が実現しました。
那須先生の見識や考え方は、教え子たちへと確実に伝わっています。先生が設計された製図室では設計教育がこれからも続いていきます。それぞれが那須先生から渡されたバトンをしっかりと継いで、「知の庭」を丁寧に育んでいくことが、一番の恩返しになると信じています。

展覧会の様子(撮影:百川美彩)
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那須聖先生 略歴
1972.3 千葉県生まれ
1994.3 東京工業大学 工学部建築学科卒業
1996.3 同大学大学院 建築学専攻修士課程修了
1996.10 東京工業大学工学部 助手
2002.4 札幌市立高等専門学校
インダストリアル・デザイン学科 講師
2007.4 札幌市立大学 デザイン学部 講師
2011.4 札幌市立大学 デザイン学部 准教授
2012.9 東京工業大学 総合理工学研究科 准教授
2024.4 東京工業大学 環境・社会理工学院 教授 |
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