追悼 瀬尾和大先生

山中浩明(昭和60年修士修了/東京科学大学教授)

 本学名誉教授の瀬尾和大先生におかれましては、令和7年9月20日81歳で逝去されました。瀬尾先生は昭和42年東京工業大学建築学科卒業、昭和44年同大大学院修士課程修了後、大林組技術研究所を経て、昭和49年東京工業大学助手、昭和57年助教授、平成7年教授に就任され、平成22年3月まで本学で地震工学および地震防災の研究教育に携われました。その後、宮城教育大学において特任教授として東日本大震災や複合災害の研究教育をお続けになりました。

 瀬尾先生は、修士課程では小林啓美先生の研究室において当時の工学分野では非常に先駆的であった不整形地盤での地震動の増幅計算に関する研究を行いました。助手就任後には、地震防災に係わる工学と理学の境界領域の研究として、夢の島での人工地震実験、首都圏での強震観測、微動の工学的活用などの研究を展開され、観測に基づく地盤震動研究にいち早く着手されました。その後、瀬尾先生は建築学会地盤震動小委員会主査、日本建築学会地震災害委員会強震データ小委員会主査、震災予防協会ESG 研究委員会副座長をお務めになるなど、地盤震動研究のリーダーの一人としてご活躍されました。さらに、研究成果の実務への展開にも熱心であり、地震調査研究推進本部、日本免震構造協会、神奈川県・千葉県・山梨県・横浜市・川崎市などの自治体の地下構造調査や地震被害想定の委員会などの委員長、委員をお務めになりました。

 瀬尾先生は、地震観測記録をみて学ぶということを研究の基本に置いており、学生には、いつも「観測記録を並べて、よくみてごらん」という姿勢で接しており、禅問答のように感じていた学生もいたかもしれません。研究室の壁には、様々な強震記録の波形が張られており、お酒のつまみになっていたことをとても懐かしく思い出します。瀬尾先生は、災害が社会に及ぼす影響に関する研究もライフワークと位置付けて行っていました。1923年関東大震災をはじめとして、国内外の多くの地震の被災地に足を運び、災害の発生から復興に至る全容を理解しようと試み、その対象も地震災害だけでなく、火山災害、風水害、地滑り災害などへと広げていきました。年を重ねても現地調査に基づく研究をとことん突き詰めていく凛とした姿をみて、いつになっても学ばせていただいたように思います。

 瀬尾先生、長い間ありがとうございました。安らかにお休みください。