代表 藤本力樹(学部4年生)
2024年11月3日、4日に建築学系学部4年を中心とした有志50名によって、工大祭にアートストリートが開かれました。
「いつか学祭で何かやりたいね。」製図室での会話でした。同期の言葉は他愛のないものだったかもしれません。しかしこの時、僕の目には第二食堂前の道路全体を覆う大屋根と、その下で人々が作品を飾ったり、路上ライブをしたり、フリーマーケットを出している様子がありありと浮かびました。
従来の工大祭では、最も賑わう通路には区割りされた模擬店が並び、野外ステージではもはやテレビ番組のような大きなプログラムが組まれていました。美術部と軽音サークルに所属していた僕にとって、学生の展示や発表が奥まった講義室で行われ、一様に実行委員会による枠組みを強いられていたのが歯痒かったのです。
学祭なのだから、下手くそでも美しくなくてもいい。自分が建てたいから建てた。自分が絵を見せたいから飾った。自分が人々に演奏を、ダンスを、芸を楽しんでほしいから参加した。そういう思いを持つ者が集まってできる空間はもっと自由で文化的な、いわば「アートストリート」のようであるべきではないか。これがこのプロジェクトの始まりです。
建築学系の同期に声をかけ、1人、2人とメンバーが増えました。他サークルへのインタビューも行い、議論も活発になりました。自らが設計したものを自らの手で作り、それを自らが使うことはワクワクするもので、話し合いの中で次々にアイデアが生まれました。この時僕は、絶対に実現させるのだと心に決めたのでした。
企画自体も実際の施工も初めての状態のため、何度も壁にぶつかりました。設計図書の作成に始まり、寄付金の募集、モックアップ製作、実物の施工、当日のプログラムの準備などの中で、トライアンドエラーを繰り返しながら少しずつ決断を重ねてきたので、きっともう一度やり直したら、全く違った空間ができることでしょう。一年以上続いたプロジェクトなので、当然メンバー全員が常に精力的に参加できたわけではありません。僕自身も代表として、誰かが来られない期間が続いても定期的に連絡を取り、いつでもまた参加できる雰囲気づくりに苦闘しました。一人が忙しくなっては別の人がその穴を埋めて、と入れ替わり立ち替わり、誰かが主体的に関わることでなんとかチームとしてプロジェクトを前に進めてきたのです。僕の記憶には、メンバー各々の長所を活かした関わり方、各々のかけがえのないファインプレーが鮮明に残っています。
当日は天候も良く、東工大や医科歯科大生の25のサークル、個人参加アーティストが集まり、たくさんの来場者を惹きつける大変魅力的な空間となりました。
地面や壁面はチョークやペンキでカラフルに彩られ、子どもたちのお絵描きの場となりました。アートストリートの北側は展示ギャラリーとし、木造の架構の周りに作品を置く、貼る、吊るすなどして配置しました。絵、写真、映画、服、ぬいぐるみ、金属細工の展示に加え、ライブペインティングや生花の実演も行われ多種多様な学生の活動が表出しました。僕たち建築学生も、プロジェクトの模型やスケッチを展示し、熱心な中高生に見ていただきました。
一方、ストリート南側のステージも大盛況でした。段差と手作りの家具によって設えられた舞台では路上ライブやジャグリング、漫才などのパフォーマンスと生命や楽器のことが学べる来場者参加型のワークショップが開催され、演者とお客さんの距離が近いイベントで賑わいました。機材やPAの用意や、アートストリートの雰囲気に合わせてアコギでの演奏を行うなど、参加アーティストの側からの歩み寄りもありました。「めちゃめちゃいい企画ですね!」という言葉を頂き、やはり屋外での発表空間はアーティストからの需要も高かったのだと実感しました。
このプロジェクトでは「私たちが作る」をモットーにしてきました。自分達で設計し、自分達で製作し、自分達で使う。一人ではなく、みんなで作る。その生き生きとした人間の活動を体現することができた活動だと思います。後輩もやる気があるようで、これから少しずつ僕たちの手を離れ、来年に引き継がれて行くことと思います。
本プロジェクトでは東工大の先生方、冬夏会の皆様に本当にお世話になりました。アドバイスや企画の周知、ご寄付やお取引先のご紹介など多岐にわたってサポート頂き、ありがとうございました。 |